冷却ロールの種類と内部構造について
フィルム・シートの製膜工程中、押出機によって溶融されたプラスチック樹脂はTダイなどの金型によってフィルム・シート状に引き伸ばされた後、樹脂の特性に合わせた条件によりプラスチックを冷却ロールを用い冷やす必要があります。
冷却ロールには様々なタイプが存在し、使用する樹脂・品質・目的によって使い分けられています。
タイプはロールの機能・ロール内の構造によって異なりますので、今回はこの違いを見ていきます。
Aタイプ(駆動有り)
このタイプの冷却ロールは駆動を必要とする大型の設備として用いられ、ロール表面温度の均一性に優れます。非駆動側(IN)から冷媒がロールの中心部にある「内管」を通じロールの駆動側に流れます。次に駆動側に行き着いた冷媒は放射状にロール表面に近い「スパイラル溝」に流れ込みロールの表面を冷却します。ロール表面を冷却した冷媒の温度は元(IN)の温度より高くなるので、冷媒の温度はOUTに近くなるにつれ高くなり、冷媒の温度に合わせてロール表面の温度も高くなります。この温度差をできる限り微小化し、ロールの表面温度を一定に保つ為に高度な設計・製作の技術・技能が用いられています。
仮にスパイラル溝の部分について設計・製作の技術・技能が充分なレベルでなかった場合、フィルム・シートの表面に「スパイラルマーク」という不具合が現れてしまい、フィルム・シートの品質に影響してしまいます。
Bタイプ(駆動有り)
このタイプの冷却ロールは外筒の部分にAタイプの様な「スパイラル溝」がありません。構造が簡単なため、製作コストを低く抑えられますが、ロール表面の温度の均一性においてAタイプに劣ります。
Cタイプ(駆動有り)
このタイプの冷却ロールは構造が簡単なBタイプよりさらに構造が簡単なものです。ロール中心から入った冷媒はロール内で内管に開けられた穴からロール内部に放出されます。ロール表面の温度の均一性はBタイプより劣りますが、製作期間も短く安価な為、汎用型として活躍しています。
Dタイプ(駆動無し)
このタイプの冷却ロールは駆動が必要ない小径の冷却ロールに採用されるものです。ロール片側(IN)から入った冷媒はロール外筒内部の「スパイラル溝」に導かれ、ロール表面を冷却します。内管が無いため、ロータリージョイントも小型で安価なものが用いられます。ロール温度はAタイプと同様で均一性に優れます。
なお、駆動が無いタイプの冷却ロールとしては重く、必要に応じて軸受けの傍にプーリーを設け、外部の小型モーターからベルトで駆動する手法等が用いられる事があります。
Eタイプ(駆動無し)
このタイプの冷却ロールは、Dタイプの「スパイラル溝」が無しバージョンです。スパイラル溝が無いのでロール表面の温度の均一性は劣りますが、重量はDタイプより軽量です。
Fタイプ(駆動無し)
このタイプ冷却ロールは、最も単純な構造の冷却ロールです。ロールは軸の両端に穴があるだけのただのパイプです。スペースが限定的で大径のロールが設置できない箇所に使用されます。製作コストは前述したA~Eタイプの冷却ロール比で最も安くなります。
総括
冷却する樹脂・品質・目的によって、冷却ロールの選定・製作を行われています。
また、日進月歩でフィルム・シートに対する品質の要求ハードルが高くなる中、分割温度制御(幅方向)などが可能な冷却ロールの開発等も行われ、より選択肢は多岐に渡っていきます。